働かないアリと終身雇用の終焉

経団連会長やトヨタの社長が「終身雇用の継続が困難になってきた」という発表を行って、大きな話題になりました。

以前から予想していたことですが、再度このことについて考えてみましので、投稿します。

2割の働かないアリへの誤解

北海道大学・長谷川研究室でアリの研究が行われました。
2年を費やしたこの研究の結果、2割のアリがあまり働かないということがわかりました。

これを聞いて、いわゆる「262の法則」または、「パレートの法則」と思った人も多いでしょう。
いわゆる、どんな組織においても、2割の人がは平均より働き、2割の人はあまり働かない…という法則ですね。

しかし、このアリの研究は、さらに深い事実を導き出しました。コンピュータ・シミュレーションの結果、この2割のあまり、働かないアリがいないと、絶滅の可能性が高くなるということだったのです。

なぜなら、全てがよく働くアリだとすると、一緒に仕事を始めて、一緒に疲れる…その時不測の事態が起こったら、誰も対処できなくなるから、というわけです。

また、よく働くアリが既に見つけた餌を効率的に採取している時に、あまり働かないアリは、ブラブラして新しい餌を見つけるかもしれません。

つまり、あまり働かないアリは、働かないのではなく、別の役割を持っていたのです

終身雇用と年功序列の誤解

日本で言うところの終身雇用は、年功序列の給与体系とセットで考えられているように思います。
本来は違う制度ですがね。

若い頃は、生産性以下の給料で働き、年をとると生産性以上の給料をもらう…と言うわけです。
また給料の一部は退職金としてもらい、生涯賃金でバランスがとれるように設計されています。
まあ、一度上がった給料は下げられないという実態はあると思いますので、年功序列を含めて終身雇用と考えることにします。

この終身雇用が守れないとは、どういう意味でしょうか?

ある時点で見ると、その時の年寄りの給料は、若い人が犠牲になって、払われているようにも見えます。

あれっ!これって、何かと似ている…そう、年金と同じ構造になっていますね。

つまり、終身雇用+年功序列と年金は同じ仕組みと言えるかもしれません。

この構造が成り立つ社会とは?

 

 

(高度)成長社会なのです。

日本のステータスとは?

日本経済は、第二次世界大戦終戦時(1945年)にリセットされました。再スタートを切ったわけです。日本の場合、このリセットボタンが押された時期がはっきりしているので、分析しやすいと言えます。

GDPの成長を見ると、明確に分かるのですが、日本の経済成長は成長曲線(S字カーブ)に綺麗に乗っています。
1945年〜1970年:黎明期
1971年〜1995年:成長期
1996年〜2020年:成熟期(予想)
2021年〜     :衰退期(予想)

このように25年ごとの周期になっています。経済が衰退期に入ると、終身雇用+年功序列というシステム自体が成り立たなくなるのは、当たり前とも言えるのです。(だから東京オリンピック後が問題になるのです。)

働かないアリがいなくなると…

ここで、働かないアリの話に戻ると、今まで働かないとされていた年長者(多くはそうかもしれませんが…)も非常時には役に立っていて、システム崩壊を食い止めていたかもしれない。ということが無くなるということなりますね。
そのために会社はコストをかけていたわけですが、そのコストを払う余地がなくなるのが、衰退期です。

こういう社会になるとどうなるか…いろいろな側面から見る必要があると思います。今まで、ふわっとした安全弁があったかもしれないわけですが、その代替えなどが必要で、それに伴って労働者側の環境も変わっていきます。

経営者/マネージャーに求められること

  • 実は安全ストッパとして、機能していたかもしれないメンバーがいなくなるので、リスクマネージメントの負担が大きくなる。
  • より公正な人事評価が求められる。(給料は年功の要素がなくなり、現能力に比例する)
  • 技術、ノウハウの伝承を明文化、シミュレーション可能にする必要性。(人依存ではなく、システム依存へ)

など考えられます。

従業員側に求められること

  • 同じ仕事をしていると、給料が上がらないので、自分のキャリアパスを自分で設計する必要性。
  • 視野や可能性を広げるため、会社以外の交流や情報交換を行う。
  • 完全に会社に帰属することはできなくなるため副業などを検討する

高度成長社会では、会社の仕事をしていれば、それが自分に合った仕事でなくても、いつか課長、部長になって、給料も上がっていったかもしれませんが、人事評価が長期視点から、短期視点に変化することが予想されるので、自分で自分の能力を把握し、自分で自分をマネージメントする能力が必要になってきます。

つまり、会社員とはいえ満足のできる生活を送るためには起業家の視点が必要になってくるのです。

これからの変化に対してやるべきこと

戦後教育は、フォロワー(会社員、従業員)を育てる教育でした。
これに対して、リーダーを育てる教育が必要です。政府の教育機関が対応するのはまだまだ先のことでしょうから、もし、自分の人生を自分でコントロールしたいと思ったら、自分で自分を教育する必要があります。

そのためにまず、必要なことは

  1. マインドセット(“心構え”とか訳されますが…)を変えることなのですが、これは言葉で言うのは簡単ですが、実際に変えるとなると、苦しいことだと感じる人が多いでしょう。なぜなら、フォロワー教育は潜在意識に刷り込まれていて、これを変える必要があるからです。
    • このための第一歩は変わりたいと思うことです。
    • 次に、自分がフォロワーの考え方を持っていると言うことに気づくことです。(批判する習慣を持った人や競争意識を持っている人は要注意です。)
  2. 行動すること
    • フォロワーの習慣は、上位者に与えられた課題や問題に対する答えを出すことです。ですから、何かを指示されないと行動できません。
    • やりたいこと、やるべきことがあっても、理由をつけて先延ばしにする…こんなことをしていると気づいたら、乗り越えるチャンスです。
  3. 嫌な気持ちを楽しむ
    • 自分が今までいたコンフォートゾーンから出ようとすると、居心地の悪い気分になります。それまでの習慣と違う行動や考え方をするわけですから、自然とそうなります。
    • 友人と意見が合わなくなる…自分にやりたいこと、なりたい自分のイメージがあって、それに対する欲望があれば、会社の帰りに上司の愚痴を言うために飲みに行きたいと思うでしょうか?そうはならないですよね。人生を変えると友人も変わる場合が多いです。

新しいことを行う場合、65〜70%はマインドセットが重要だと言われます。スキルやノウハウは30%なのですね!
新しいことに対する壁は、まずは心理的なブロックです。

これを知り、自分を再教育していければ、新しい行動や考え方が習慣になっていきます。

ロバート・キヨサキは、ネットワークビジネスでフォロワーからリーダーに変わる教育ができると言っています(参考)

 

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